便秘症

数日間もお通じがない、お腹が張って苦しい、お通じがあってもスッキリ出ない、便秘薬が手放せない…。
このようなお通じの悩みを持っている方は多いのではないでしょうか?
便秘は、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」(慢性便秘症診療ガイドライン2017年)と定義されています。
また、回数の目安は『3日以上排便がない状態』、そして『毎日排便しても残便感があるもの』も便秘の定義に含まれています。
調査によると、日本人全体では7人に1人の割合で便秘の悩みをもっていといわれます。
特に女性に限っては2人に1人の割合で悩みがあるという結果が出ています。
女性のほうが習慣的に便秘薬を利用している人も多いのではないでしょうか。
ただ、高齢になるにつれて男女差は少なくなってきます。
女性に便秘が多い理由は?
女性ホルモンの影響
女性ホルモンは主に2種類あり、エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)です。
このうちプロゲステロンは排卵後に増加し、妊娠できるよう準備をするホルモンです。
体内に水分を貯めこむ働きをするため、腸内の水分量が減ります。
その他、腸の蠕動運動も抑える作用もあるので、便秘しやすくなります。
また更年期の女性では、ホルモンバランスの崩れからストレスを感じやすくなり、自律神経が乱れ、便秘しやすくなります。
さらにエストロゲンの減少により、水分量が減り、腸の潤いが少なくなることで、便秘がちになります。
筋力が少ない
女性は男性よりも筋肉量が少なく、腹圧も弱い傾向にあります。
腹圧が弱いと便を押し出す力も弱くなります。
また女性はデスクワークの方が多いので、運動不足から腸の蠕動運動が低下し、便秘しやすくなります。
筋力が低下すると内臓も下垂しやすく、腸が弛緩して便が溜まりやすくなります。
下腹がポッコリと出ていませんか?
内臓は重力で下に引っ張られますので、腹部周辺の筋肉が弱いと、腸が下垂して下腹部が出てやすくなります。
年齢とともに筋力が衰えて、腸内の潤いも低下するので、高齢になるに従い男性でも便秘しやすくなります。
無理なダイエット
無理な食事制限や、栄養バランスの偏りにより腸の活動が低下し、便秘になります。
特にダイエットでは炭水化物を制限する人もいます。
炭水化物は糖質と食物繊維からなります。
極端な炭水化物の制限により、食物繊維が不足し便秘しやすくなります。
また油分をカットし過ぎると、便が腸を通るときの潤滑剤が減り、便が出にくくなります。
便秘が体によくない理由
便秘が体に与える影響は、単にお腹が張ってくるしいだけではありません。
便秘は体に様々な悪影響をもたらします。
腸は単に食べ物を消化して、カスを外へ出すだけの器官ではないのです。
脳と『第二の脳』である腸の関係性
『腸脳相関』という言葉を聞いたことありますか?
腸は『第二の脳』ともいわれ、腸には脳の次に多くの神経細胞が存在し、脳の指令なしに独自で動く機能を備えています。
そして脳と腸はお互いに情報を発し、影響しあっています。
自律神経やホルモン、サイトカインといった物質を介して、脳と腸はお互いにやり取りしています。
例えば、ストレスを受けるとお腹が痛くなったり、便秘や下痢になったりする人もいますが、これはストレスを受けた脳が自律神経を介して腸へ信号を送るからです。
このように脳が受けたストレスが腸の症状として現れたり、反対に腸に起きた変化が脳の機能に影響を与えたりすることを、『腸脳相関』といいます。
また腸内の環境が脳内の神経伝達物質である『セロトニン』に影響を及ぼしていることが近年の研究結果により解明されています。
セロトニンは別名『幸せホルモン』ともいわれ、体のリズムや睡眠、精神の安定をもたらしてくれます。
このホルモンが不足すると
- 疲れやすい
- 食欲がでない
- 寝つきがわるい
- イライラ感
- うつ
といった症状が出てきます。
体内のセロトニンの95%は腸で作られているといわれます。
ただ腸で作られたセロトニンが直接脳まで届くわけではありません。
脳には血液脳関門という関所があって、セロトニンは通過することはできず、腸から脳へ運ばれることはありません。
腸にあるセロトニンは腸に作用して蠕動運動などに関わっており、幸せホルモンとして働くセロトニンは脳内で合成されています。
セロトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンという物質から合成されます。
このトリプトファンは腸内細菌の働きにより作られ、脳のセロトニン生成に関わってくるのです。
腸内環境が悪化しセロトニンが不足すると、精神的なリズムまで狂いが生じてしまいます。
『腸管免疫』~免疫機能と腸の関係~
免疫とは病気から体を守る力です。
体内に侵入しようとする病原菌やウイルス等に対して、免疫細胞が排除するように働きます。
また同じ種類の細菌やウイルスが再度侵入しようとすると、すでに記憶していた免疫が反応します。
このように免疫細胞は一度侵入してきたものを学習して免疫を獲得することもできます。
腸内には、体全体の免疫細胞の7割が集結しているといわれます。
腸は食べ物を消化し、必要となる栄養を吸収して、残渣を排出する役目をもっています。
食べ物を口にするとき、食物だけ体内に入ってくればいいのですが、一緒に細菌やウイルスが侵入してきます。
これら外敵が腸から体内に侵入しないよう、免疫細胞が守っているのです。
そしてこのとき、免疫細胞は腸内細菌と協力することで免疫機能を高めているのです。
腸内には約1000種類、100兆個もの細菌が住んでいるといわれます。
腸内細菌が善玉菌優位の状態であるほど、免疫機能が正常に働くことができるのです。
そのため慢性的な便秘は免疫機能の低下にもつながってきます。
肌荒れや肩こり等の不定愁訴も
腸内細菌の影響は免疫機能だけにとどまりません。
長時間、腸内に便が停滞していると、その便をエサとして悪玉菌が増えます。
そして便の腐敗が進むと、アンモニアや硫化水素といった有害物質が発生します。
腸内で発生した有害物質は体内に吸収され全身を巡ります。
そのため肌荒れや吹き出物といった肌のトラブルや、疲労感や不眠、頭痛といった自律神経のトラブル等、様々な症状につながります。
また腸内でガスが溜まり、腸が膨らんでお腹や背中を圧迫し、血行不良をおこし、肩こりや腰痛の原因にもなります。
このように単に便秘といっても、精神的なことから免疫や自律神経系の不定愁訴まで、体中のいたるところに悪影響を及ぼしてくるのです。
便秘を改善するためには
健康のカギは腸が握っているといっても過言ではありません。
最近では『腸活』という言葉をよく耳にしますね。
「もう長年の便秘だから…」といって諦めず、腸を活性化させましょう。
また「毎日出ているから便秘ではない】と思っている方のなかには、ピストン状に便が出ているだけで、腸に便が溜まっている場合もあります。
腸はすべての健康に関わってきますから、ぜひ便秘を改善して健康に過ごしましょう。
まずは食生活から
食べた物によって便は出来ていますから、食生活によって便の具合は大きく変わります。
以下の項目にあてはまる方は要注意です。
- 肉料理中心で野菜が不足している。
- 揚げ物や脂っこい料理が好き。
- 食事の時間が不規則で、間食も習慣化している。
- スイーツが毎日欠かせない。
- 食事時間が短く、早食いだ。
- 発酵食品はあまり食べない。
- 極端な食事制限、ダイエットをしている。
一日の食事のなかに、旬のお野菜や海藻類をたくさん摂り入れ、バランスの良い食生活を心がけましょう。
また間食をすると、常に腸内に食べ物がある状態となり、腐敗しやすく、悪玉菌が増えてしまいます。
何気なく好きな時間にダラダラと間食することを習慣化しているのなら、今すぐやめましょう。
食事の時間のリズムを正して、腸の負担を減らしましょう。
また便秘を解消するためには、善玉菌の餌となる、食物繊維と発酵食品がカギとなります。
以下の食材がおすすめです。
〇ラッキョウ・エシャレット
ラッキョウやエシャレットには『フルクタン』といわれる食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維の含有量は野菜の中でトップクラス。
生ラッキョウの100g当たり、22gの食物繊維が含まれています。
これは食物繊維が豊富といわれるゴボウの、なんと約4倍にもなります。
そのうち約90%が水溶性食物繊維です。
食物繊維には2種類あり、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。
不溶性食物繊維は便のかさを増して腸壁を刺激し、蠕動運動を促します。
水溶性食物繊維は水に溶けやすいので、便が柔らかくなり排便しやすくなります。
便が硬い、コロコロした便、すっきりでないという人は水溶性食物繊維を意識的に摂るといいでしょう。
その水溶性食物繊維を豊富に含んでいるのがラッキョウです。
ラッキョウの料理というと漬物が思いつきますが、生のラッキョウを炒めたり煮たりしても美味しく食べられます。
またエシャレットはラッキョウの若いうちに収穫したもので、生でも美味しく食べられます。
ただし、ニンニクと同じような刺激の強い成分も含まれているので、一度に多量に食べると腹痛をおこす場合もあります。
一日3、4粒を目安に食べるといいでしょう。
こちらのラッキョウのレシピも参考にしてください↓
〇山芋、長芋
山芋や長芋にはレジスタントスターチ(難消化性デンプン)というデンプンが多く含まれています。
通常のデンプンは小腸で吸収されエネルギーのもととなりますが、このレジスタントスターチは消化されにくいため、大腸までしっかりと届き、善玉菌の餌になり、活動を手助けしてくれます。
またレジスタントスターチは先に述べた不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方の性質を併せ持つため、第3の食物繊維ともいわれています。
山芋や長芋は、生食、または加熱したものを冷まして食べると、レジスタントスターチを効率よく摂取できます。
胃腸が弱く、虚弱体質の方は特におすすめの食材です。
長芋のレシピもあります↓
〇発酵食品
発酵食品には乳酸菌やビフィズス菌、麹菌といった善玉菌が多く含まれています。
善玉菌を直接摂取することで、腸内の善玉菌を増やすことができます。
善玉菌のなかには生きたまま腸まで届くものや、腸に届く前に死んでしまうものもありますが、後者の場合でも腸内の善玉菌のエサとなり、増やすことができます。
また発酵食品はその食品自体が微生物によってある程度消化されているため、体内で消化するためのエネルギーや消化酵素が少なくてすみ、胃腸の負担が抑えられます。
日本は発酵食品の宝庫。
味噌や醤油といった調味料から、糠漬けや納豆、甘酒、ヨーグルト等、とても身近な食材ばかりです。
ぜひ毎日の食事に摂り入れていきましょう。
〇亜麻仁油やえごま油
油分も適量に摂り入れることで、便がスムーズに出やすくなります。
主にオメガ3系の油である亜麻仁油やえごま油を摂り入れましょう。
油はバランス良く摂取することが大切です。
詳しくは以下のページをご参照ください。
適度に運動しましょう
運動不足によって筋力が低下し、腹圧が弱まります。
腹圧が弱まると、排便するための力が低下し便秘しやすくなります。
同時に胃や腸を支えるための筋力も弱まるため内臓が下垂し、蠕動運動が低下します。
特にデスクワークが多い、日頃運動不足な方は要注意です。
体を動かすことは筋力の維持だけでなく、心肺機能の向上、全身の血行改善、ストレス解消、自律神経の安定などの効果が望めます。
普段運動をしていない方は、体の負担が少ないウォーキングがおすすめ。
まずは1日20分を目安に歩きましょう。
まとめ
便は体からの便りといわれるように、健康のバロメーターです。
たかが便秘と侮ってはいけません。
気持ちがいい便りがくるように、体を改善していきましょう。
また、はり灸や整体も便秘の改善に役立ちます。
当院の施術を受けた方々から
- 施術を受けた後、排便があった。
- いつも以上にドッサリと出た。
- 段々と排便のリズムが出来てきた。
- ポッコリしていた下腹が凹んできた。
といった声もよくお聞きします。
便秘でお悩みの方は、どうぞ『はり灸・整体 自然堂治療院』までご相談ください。