油と脂 ~健康に良いアブラって??~

『アブラ』というとどんなイメージがありますか?

アブラを摂ると太るとかダイエットの敵、コレステロールが増えて健康を害するといった、あまりよくないイメージをもつ方も多いでしょう。

しかし一概に『アブラ=良くないもの』という認識は誤解です。

まずアブラは体にとって必要不可欠なものです。

三大栄養素でもある脂質は細胞膜やホルモンの形成に欠かせない物質です。

また脂肪によって体は保護されており、寒さからも身を守ってくれます。

脂肪は体にとって必須なものですが、『アブラ』にも『良いアブラ』と『悪いアブラ』があります。

ここでは様々なアブラの分類と、良いアブラと悪いアブラはどんなものかを紹介します。

アブラの分類

『アブラ』をパソコンやスマホで漢字変換すると、『油』と『脂』という字がでてきます。

ちなみに『膏』も出てきますが、軟膏とか塗り薬で使われることが多く、食に関してはあまり使われませんので、こちらは省きます。

『油』と『脂』の違い、ご存じですか?

『油』はサラダ油やゴマ油といった、サラッとしたイメージがあります。

『脂』は牛脂や豚脂といったもで、ギトギトしてる感じがありますね。

その通りで一般的に、『油』は常温で液体のもの、『脂』は常温で固形のものをいいます。

『油』は、ゴマ油や菜種油、オリーブオイル、米油などの植物油。

『脂』は牛や豚や鶏といった、動物性の脂です。

魚のアブラは魚油というように『油』の漢字が使われており、常温で固まりません。

魚介類は変温動物で低温の水の中に住んでますから、常温で固まってしまったら生きていけませんものね。

あとバターは牛の乳脂肪が主成分ですから、『脂』です。

似たような食品でマーガリンやショートニングがありますが、これは人工的に加工したものですので、常温で固まっていても中身はコーン油や大豆油といった植物油が主成分です。

ここで、『油』と『脂』の解ける温度(融点)の違いを述べてみます。

植物油のほとんどは0℃以下にならないと個体になりません。

例外として、ココナッツオイルやパーム油といったものは常温でも個体であり、20~30℃位で溶け出します。

一方、一般家庭の食卓に並ぶお肉の脂、その溶ける温度はおおよそ以下の通りです。

  • 牛脂35~50℃
  • 豚脂33~46℃
  • 鶏脂30~40℃

鶏 → 豚 → 牛の順に溶けにくく、人の体温よりも高いです。

肉料理を調理した鍋を水で洗おうとすると、ギトギトな脂がついていて大変ですよね。

それと同じように、お肉を食べたあとのお腹の中もギトギトかも。

脂肪は十二指腸で胆汁の力を借りなくては消化できない成分です。

動物性の脂は人の体温より融点が高いので固まりやすく、より消化に負担がかかってきます。

昨今では、動物性脂肪の摂取は、消化するために多量の胆汁分泌が必要になり、脂肪の消化の際に発がん性物質が発生するといわれています。

多量の動物性脂の摂取は大腸がんのリスクになりますので注意が必要でしょう。

植物性油は体にいいの?

では植物性油は体に良いのでしょうか?

アブラの分類についてもう少し詳しくみていきましょう。

アブラは脂質のもつ主成分『脂肪酸』により次のように分類されます。

前述した常温で個体の脂は『飽和脂肪酸』、液体の油は『不飽和脂肪酸』に分けられます。

ほとんどの植物性油脂は不飽和脂肪酸です。

不飽和脂肪酸はさらに『一価不飽和脂肪酸』と『多価不飽和脂肪酸』に分けられます。

一価不飽和脂肪酸はオメガ9(またはn-9系)といわれ、オレイン酸が多く含まれる油です。

その代表はオリーブオイルです。

よくオリーブオイルが健康に良いと耳にしますが、オレイン酸には善玉コレステロールを下げずに、悪玉コレステロールだけを減らす効果があることが昨今の研究でわかっています。

またオレイン酸が多く含まれている油は、不飽和脂肪酸のなかでもっとも酸化しにくく、加工調理にも向いています。

ただオリーブオイルも高温になりすぎると酸化しますので注意が必要です。

次に『多価不飽和脂肪酸』について。

油において、この多価不飽和脂肪酸の摂り方が一番重要となります。

多価不飽和脂肪酸はオメガ6とオメガ3の2種類に分けられます。

まずこの2つの脂肪酸は体内で合成できないという特徴があります。

その他の脂肪酸は体内で合成できますが、この2つの脂肪酸は必ず食事から補わなければならないので、必須脂肪酸ともいわれています。

オメガ6を代表する油は、リノール酸が多い油であり、大豆油やコーン油、ゴマ油があります。

オメガ3を代表する油は、αリノレン酸やDHA、EPAが多い油で、亜麻仁油、えごま油(シソ油)、クルミ、イワシやサバといった青魚があります。

この2つの脂肪酸はどちらも細胞を作るうえで欠かせないものですが、全く正反対の働きをもっています。

例えばオメガ6は細胞膜を硬くしっかりとした造りにするのに対し、オメガ3は柔軟性をもたせる役割があります。

またオメガ6は病原菌などが体内に侵入したとき、白血球を活性化させて、菌と戦う役目を果たしますが、オメガ3は逆に白血球を抑制して炎症を抑える働きをします。

このように2つの脂肪酸は常にバランスを取り合って、体を正常に保とうとしています。

しかし、この2つの脂肪酸の摂取バランスが崩れ、オメガ6が過多になると、細胞の柔軟性が失われたり、白血球が暴走してしまいます。

その結果、

  • 動脈硬化
  • 血栓ができやすい
  • アレルギーの促進
  • 炎症の促進

といった体に対して悪影響を及ぼします。

これら症状は、現代人に多い脳梗塞や心筋梗塞、ガン、喘息やアトピーといったアレルギー疾患につながります。

現代の食生活はオメガ6に偏りがちです。

オメガ6は、一般的に調理に使われるサラダ油、トウモロコシや大豆といった穀物にも含まれていますし、それらの穀物を餌とする家畜のお肉にも多く含まれています。

さらに揚げ物やスナック菓子、ドレッシング、マーガリンといった油分の沢山入った食べ物も多い傾向にあります。

以前NHKの番組で、3500年前の古代エジプトのミイラから動脈硬化があちこちにみつかり、その原因が当時の食生活の変化にあるのではという話があり、とても興味深いものでした。

その当時、穀物を飼料とする家畜がおこなわれ、またゴマなどから食物油をつくるようになり、それによりオメガ6の摂取が多くなったとのことです。

穀物で育てた牛と牧草で育てた牛を比較すると、後者のほうがオメガ6の含有量が低く、オメガ6とオメガ3の割合が理想的となり、サラッとした脂になるようです。

理想的なオメガ3とオメガ6の割合は1:1~1:4といわれています。

しかし現代の食生活は1:10、さらにひどいものは1:50まで上がり、様々な現代病を引き起こしている要因となっています。

一般的に動物性脂は不健康で、植物性油は健康的というイメージがありますが、これは大きな間違いで、どの油脂を摂るか、そのバランスが大事なのです。

まとめ
~健康であるための油の摂り方~

アブラを摂るうえで一番大事なことはバランスです。

まず前述したように、現代の食生活ではオメガ6の摂取が過多となります。

オメガ6は必須脂肪酸ですが、穀物など普段口にするものに含まれていますので、意識して摂る必要はありません。

却って現代人は摂りすぎ傾向にありますので、減らす意識をした方がいいでしょう。

そしてオメガ3の油を積極的に摂りましょう。

それはαリノレン酸が豊富な亜麻仁油やえごま油、DHAやEPAが豊富な青魚などです。

ただしオメガ3は熱や光に弱いので、植物性オイルの場合は加熱せずに、必ず生食で。

そして開封したら冷蔵庫に保存し、早めに食べきりましょう。

亜麻仁油やえごま油ならば、毎日スプーン1杯を目安に摂取するとよいでしょう。

サラダのドレッシングの代わりに、亜麻仁油と少々の塩とお酢だけでも十分美味しいです。

そして調理用の油で一番おすすめなのがオリーブオイル。

オレイン酸が豊富で植物油のなかでは酸化しにくく、リノール酸が少なめで、バランスの取れたオイルです。

一般的に植物油は生ものであり、熱や光で酸化しやすいので、油を買うときには低温圧搾製法(コールドプレス)、遮光ビンに入った、良質な油を選びましょう。

また、お肉の脂は摂りすぎると大腸がんのリスクが高まりますので、控えめにしましょう。

脂身の少ない部位を選ぶとか、牛よりも豚、豚よりも鶏を選ぶといいでしょう。

そして一番避けたいものは、マーガリンやショートニングといった植物性の加工油脂。

人工油脂の製造過程で出てくるトランス脂肪酸は、今では世界中で規制されています。

悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化が促進し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクになるといわれています。

パンやケーキ、クッキーなどにもマーガリンやショートニングが使用されていることが多いので、注意が必要です。

私自身、日常では亜麻仁油をドレッシング代わりに用いて、調理用には主にオリーブオイル、料理によっては菜種油やゴマ油も使います。

脂身の多いお肉や乳製品は控えめに、お肉料理をするときは、鶏のささ身や胸肉を選ぶことが多いです。

そしてマーガリンは極力摂らないようにしています。

お陰様で今のところ病院のお世話になることもなく、健康に過ごせています。

以上、アブラのおすすめの摂り方をまとめます。

  • オメガ3のオイル、亜麻仁油やえごま油などを積極的に摂る。
  • マーガリンやショートニングが入っている食材は買わない。
  • 動物性の脂は控えめに、お肉を選ぶときは脂身の少ないもの、牛よりも豚、豚よりも鶏がおすすめ。
  • 調理用にはオリーブオイルを使用し、揚げ物やお菓子など油が多い食べ物は控えめに。
  • 植物油を買うときは、低温圧搾(コールドプレス)のものを選ぶ。

アブラの摂り方を変えるだけでも、体調に変化が出てきます。

良いアブラを摂取して、健康な体を維持していきましょう。

お体の悩みや食事のことについては、掛川・菊川の『はり灸・整体 自然堂治療院』まで、ご相談ください。